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  • 矢作ルンドベリ智恵子

【世界から】働く中心は障害者


スウェーデンで整備進む「作業場」

スウェーデンにおける「ノーマライゼーション」、つまり、障害をもつ者ともたない者とが平等に生活する社会を実現させる考え方がここに体現されている。それは、知的障害者が就労する作業場。「福祉大国」といわれるだけあってスウェーデン国内には数多くの就労支援を目的とする作業場がある。たとえば、首都ストックホルムには現在160ほどの自治体経営の作業場があり、それぞれが障害の特性や能力に合った施設、例えば、カフェやレストランなどで活動している。

▽「カフェ・ヒトム」

ストックホルムの中心から地下鉄で南に約15分、テレフォンプラン駅から歩いて5分ほどの新興住宅エリアにある「カフェ・ヒトム」。地元の人たちから人気のこのカフェで中心となって働いているのは知的障害者だ。

カフェでは58人の知的障害者と彼らをサポートするスタッフ20人が働いている。北欧モダンなインテリアで統一された店内は明るくおしゃれな雰囲気。カフェの外にはズッキーニやトマトなどの野菜を栽培している温室をカフェとして使う「温室カフェ」もある。

平日の日中のみオープンしているこの店で作られるパイやサラダ、お菓子などはすべて手作り。訪れる客は、近くの会社に勤める会社員、小さい子供連れの親子、お年寄りなどが中心だ。リピーターも多く、特にランチタイムは忙しい。

カフェと同じ建物内には中級程度の知的障害者の就労支援を目的とした洗濯作業場を設けている。ここでは従業員が着る作業服の洗濯やアイロンがけをする。カフェではこの他に、建物2階にある会議室の貸し出しや食事のケイタリングなどを行っている。

▽仕事の様子

カフェでの仕事は料理や菓子作り、食器洗い、接客、レジ打ちなどが中心で、個々の働く意力や能力によって作業を分担している。年齢も21歳から80歳ぐらいまでと幅広い。勤務時間に個人差はあるが、おおむね平日の8時半ごろから15時半ごろとなっている。

楽しそうに接客を担当していた50代前半の男性に声をかけてみた。すると、「午前中は洗濯作業場、午後はこのカフェで働いているんだ。洗濯作業場は、ごねるやつもいるから、こっちの方が気楽かな。」との答えが返ってきた。

なるほど、どの職場でもそうだがいろんな問題があるようだ。

ダウン症のこの男性は、レジ打ちや接客の仕事を好んでやるようだった。知的障害者が接客を担当する際は、注文された料理を間違いなく運べるように、注文された料理の写真とテキストが載っている引換券を付けている。これがあれば、注文された料理と引換券の絵を照らし合わせて、間違いがないかどうかが知的障害者自身で確認ができるというわけだ。

障害者が働きやすい工夫は、写真を多く使ったレシピ、料理画像を押すことで処理できるタッチスクリーン形式のレジなどにもみられる。

▽社会とのつながり

就労支援施設の運営はあくまでも利益を追求しないというスタンス。障害者は就労を通じて社会性を身に着けることで自立を目指す。

このカフェの責任者である女性は「ここでは働くスタッフの主体はあくまでも障害者。私たちは彼らが必要な時にサポートするという立場で雇われています。彼らがいなければ、私の仕事はないわけですから」と、熱く語った。

これまで、この就労支援施設で約2年間働いた障害者のうち6人が一般のレストランなどに就職している。障害の程度やそれぞれの特性によって、この施設以外では働けないという人ももちろんいるようだ。とは言え、社会とつながるこのような職場で得た経験が、彼らが自立するにあたっての大切なよりどころとなっていることは間違いない。(スウェーデン在住ジャーナリスト、矢作ルンドベリ智恵子=共同通信特約)

共同通信47NEWS 9月12日配信 https://this.kiji.is/280236180513424891?c=39546741839462401


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