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  • 南田 登喜子

【世界から】豪州は投票率9割超 義務だけどイベントとして楽しむ


投票が国民の権利であると同時に義務とされるオーストラリア。7月2日に実施された上下両院同時解散総選挙の投票率は約91%だった。国政選挙が義務投票制になった1924年以来、投票率は90%を下回ったことはないという。日本とはずいぶん異なるこの国のユニークな選挙事情に注目してみよう。

▽気になる罰則は?

正当な理由なく棄権した有権者に科せられる罰金は、20豪ドル(約1500円)。裁判所で争った場合は、罰金刑(最高180豪ドル)プラス裁判費用の負担が言い渡され、前科がつく可能性すらある。

投票には行かなくてはならないが、「投票しない自由」はある。名簿チェック後に投票用紙を受け取ってしまえば、白票でもとがめられることはないからだ。

▽行くのが当然

オーストラリアでは、投票しやすい環境づくりが進められ、投票に行けないという「言い訳」が通用しにくい。

連邦選挙は、登録州内ならどの投票所も利用できるし、州外投票や外国での在外投票の手続きもシンプルで合理的。事前投票所は600カ所以上設置され、郵便投票も浸透している。

日本の20倍という広大な国土をカバーするために活躍するのは、移動投票チームだ。空路や航路も駆使して遠隔地を巡回するほか、病院や老人ホーム、刑務所などの施設へも出向いていく。

▽順位を記入

下院の選挙制度はこうだ。定数1の小選挙区制ではあるものの、最も当選してほしい人1名を選ぶのではなく、候補リストに1、2、3…と優先順位を記入する。全面的に支持できなくても、より好ましい(あるいは好ましくない)という視点で意思表示できるところがいい。

開票の結果、第1順位の得票数だけで過半数を獲得した候補がいれば当選となる。過半数を獲得した候補がいなければ、最下位の候補を除外。さらにこの候補の第2順位の票が他の候補に振り分けられる。こうして過半数を獲得する候補者が出るまで決選投票を繰り返す。

集計方法は複雑だが、死票率の低減が図られている。その分、集計には時間がかかり、7月の総選挙は、投票日の8日後にようやく勝利宣言が出た。

▽選挙はイベント

投票所には軽食を販売する屋台が現れてイベントムードを盛り上げる。一番人気は庶民が愛するソーセージ・シズル。「シズル」はジュージュー焼ける音のことで、バーベキュー台から漂う香りに包まれて素通りできるオーストラリア人は珍しい。

出店するのはもっぱら学校やコミュニティー団体である。ボランティアスタッフに聞いてみると、「投票所は最も効率的な資金集めの場」なのだとか。朝から晩まで、投票所には幅広い層の地元民が往来し、時に行列までできるのだから、さもありなん。

▽国民性

今回の総選挙では、投票所を訪れたターンブル首相が「オーストラリアの民主主義はソーセージ・シズルの匂いなくして成り立たない」とコメントしたことが報道された一方で、普通は上から食べるソーセージ・シズルを野党党首がなぜか真ん中からパクッと頬張ったことを揶揄する声がネット上で広まっていて、おかしかった。

「政治家いじり」は日常茶飯事で、政治ネタのパロディーや風刺トークを繰り広げるニュース系コメディー番組の人気も高い。辛辣な皮肉でからかわれても、ユーモアを交えて切り返せないと、この国の政治家は務まらない。

高投票率維持のカギは、投票しやすく、民意が反映されやすい制度に加え、どうせ行くのなら…と、選挙もイベントとして楽しみ、普段から政治(家)ネタをジョークに盛り上がる国民性なのかもしれない。(シドニー在住ジャーナリスト、南田登喜子=共同通信特約)

共同通信 47NEWS 8月2日公開分 http://this.kiji.is/133102213793169410


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