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  • 冨久岡ナヲ

素晴らしい環境保全策も、住民無視ではなりたたない。持続可能な漁業を広めるソーシャル・ビジネスに注目。


小規模漁業で生計を立てる人々の97%は南半球の開発途上国に住み、伝統的な漁法を踏襲している。その多くが、海洋資源についての知識も、保護に対する意識も、また漁業政策への発言力も持っていない。魚が採れなくなって貧困度は悪化し、結果は領海外での密猟や海賊行為にまで及んでいる。

これは、イギリスで海洋生物学を学んだアラスデア・ハリス博士が、サンゴ礁と気候変動の研究者としてマダガスカルに赴いて知った現実だった。先進国の学者がどんなに素晴らしい保全策を考えても、住民を無視して魚からスタートしたのでは意味がない---と実感した博士は、エコツーリズム運営で活動資金を得つつ、漁民自身の手による海洋保護と漁村経済の活性化を促進するソーシャル・ビジネス「ブルー・ベンチャーズ」を2003年にロンドンで起業した。

最初の活動はまず、マダガスカルの村で魚の生息状況を理解してもらい、区域別に休漁期間を設けることだった。タコ漁で生計を立てていた地元漁民のベゾ族は、休漁後にタコの個体数が劇的に増え収入があがったことに驚いた。

その話は近隣の漁村に広まり、誰もがやり方を知りたがった。それはマダガスカル初の地域自主管理海域(LMMA)誕生につながり、草の根レベルの海洋保護革命とまで呼ばれた。10年後の今、マダガスカルには65ものLMMAがある。

漁村の収入源多様化を

インド洋周辺の国々、ベリーズ、東チモールなど世界中に活動を拡大しているブルー・ベンチャーズはさらに、漁村の収入源多様化を計る「アクアカルチャー」のアイデアも授けている。たとえば、アジア圏で需要の高いナマコや、化粧品などに使われる海藻の養殖。当初は半信半疑だったマダガスカルの漁民も、3年かけて事業が軌道に乗ってからは安定した収入が得られるようになり大喜びだ。

養殖なら子育て中の女性も参加でき、いまや養殖施設労働者の半数を占める。また、地元の小学校も養殖地を入手、その水揚げ収入で授業料をオフセットし、貧しい漁村の子供達が学校に行かれるようになった。持続可能な漁業を目指すことが女性の地位向上や教育普及にまで及ぶ、というハリス博士のモデルは確かな実績を生みだしている。

今までに15万もの漁民がブルー・ベンチャーズと共に持続可能な漁業へと歩み出しているが、この数を2020年までに3百万人にする目標に挑戦中だ。現地で海洋資源について学び、ブルー・ベンチャーズの活動にボランティアとして触れることのできるツアーは、マダガスカル、ベリーズ、東チモールの三拠点で行なわれている。

(オルタナ46号(2016年9月29日発売)掲載 http://www.alterna.co.jp)

オルタナ46号(2016年9月29日発売)掲載


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