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冨久岡ナヲ:新型コロナでDV増加、英国の薬局や鉄道も支援



新型コロナ感染拡大によるロックダウンが始まった頃から、英国では家庭内暴力(DV)が以

前より増え、社会問題化している。外出制限のため暴力的なパートナーと一緒に家にいる時間が長くなったからだ。大手薬局チェーンのブーツは全国の支店で、DV駆け込みスペースの提供を始めた。シェルター避難のために、無料で鉄道に乗れる制度も広がっている。

英国政府は、家族単位で自宅隔離し無用な外出を極力減らすことで感染拡大を防ごうとした。5月末まで、外出できるのは食料や薬など生活必需品の購入と、1日一度、1時間以内の運動や散歩だけだった。家族全員で家に閉じこもる時間が長くなったことで、家庭内での暴力(DV) や虐待(DA)が増加した。警察の犯罪防止ホットラインに寄せられる電話は感染拡大前に比べ50%増、助けを求める携帯用アプリからのSOSは47%増えている。英国最大のDV•DA被害者支援団体である「リフュージ」のヘルプラインには平常時と比べ7倍もの数の相談電話を受ける日もあった。

被害者の多くは弱い立場にある女性と子供だが、加害者は男性だけではない。3世代同居など大家族が多いエスニック•マイノリティの世帯では、姑や義姉妹などによるいわゆる「シンデレラ虐待」も増えている。助けを求めたくてもインターネットへのアクセスが閉ざされ、携帯電話の通話も監視されている被害者の数は誰にも把握できないため、安全への懸念は高まるばかりだ。

全国に2,400あまりの店舗を有する大手薬局チェーンのブーツは、5月1日から全店舗においてDV駆け込みスペースを提供し始めた。薬を買うという理由で外出できた被害者が店内カウンターで健康相談をしたいと申し出ると、予防注射などを行うために設けられたカウンセリングルームに通される。そこから支援団体などに連絡できる仕組みだ。ブーツで働く従業員と薬剤師には被害者への対応についてのトレーニングがなされ、スムーズに助けを求められるよう尽力している。開始から1週間にして、他のチェーンや独立系の薬局などが続々と参加しはじめた。

また、家を出て逃げようとする被害者は、加害者が容易に追ってこられないよう、自宅からできるだけ遠くにあるシェルターへの避難を目指す事が多い。しかし、現金やキャッシュカードを取り上げられていたら切符を買うことができない。こうした状況を知ったある幹線駅の駅長と女性支援団体ウィミンズ•エイドが「避難者の乗車を無料に」と呼びかけ、昨年秋からその幹線を走る鉄道会社によって「レイル•トゥ•リフュージ(リフュージ=避難所の意味もある)」サービスが始まっていた。4月からはすべての鉄道会社が一斉に足並みを揃えて参加することとなり、英国のどこに住んでいても、無料でシェルター最寄駅までの乗車券を手配してもらうことが可能になった。最初にこの取り組みをブーツに持ちかけた支援団体「ヘスティア」は、「新型コロナのパンデミックが収束したあともぜひ、この制度を続けてほしい」とブーツを含め全国の薬局に要請している。

警察も、被害者が携帯電話から緊急通報番号999にかけても加害者がそばにいてオペレーターと話せない場合、55という番号を押すことで危険を知らせる「サイレント•ソリューション」という既存制度の認知普及を強化している。段階的なロックダウン解除がすすむ英国だが、DV被害は拡大したままだ。政府は、7,600万ポンド(約100億円)の助成金を各種DV•DA支援団体に供出するほか、家庭内の虐待防止法案の審議期間を縮小し制定を急ぐと発表した。


掲載:オルタナ・オンライン2020年6月4日に加筆


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